「まちのラジオ」のメンバーは災害FMの先輩たちに学ぶため、宮城県女川町で研修合宿に臨んだ。スタジオはコンテナハウスだ=2025年5月18日、女川町、上田真由美撮影

 早口で読み上げられていく名前、名前、名前……。

 その数、182。それは胸の熱くなる時間だった。

 2月23日、能登半島地震の被災地、石川県輪島市町野町であった臨時災害放送局(災害FM)の運用実験。役場支所で行われた5時間にわたる公開放送の最後に、パーソナリティーを務めた元NHKアナウンサーの武内陶子さんらがメッセージやリクエストを寄せた人たちのハンドルネームをすべて読み上げた。

 「どれだけの人が町野を思っているか、伝えたかった」と武内さん。この日の運営を担った地元住民の代表、山下祐介さん(39)は余韻冷めやらぬ会場できっぱりと言った。「楽しかったねで終わらせず、これを継続させたい」

「まちのラジオ」の運用実験放送。公開生放送の会場に多くの住民が集まった=2025年2月23日午後3時8分、石川県輪島市町野町、上田真由美撮影

 あれから3カ月余り。山下さんの決意表明が、現実のものとなりつつある。

 山下さんら「町野復興プロジェクト実行委員会(町プロ)」は、今月下旬にも災害FM「まちのラジオ」を開局する。

女川の「先輩」に学ぶ

 災害FMは、生活や支援の情報をきめ細かく伝えるために自治体などが臨時で開設するラジオ局。2011年の東日本大震災では26局開局したが、能登の被災地にはできていなかった。

 「まちのラジオ」はSNSが苦手な高齢者も情報を得られるよう、まずは1年間、24時間の終日放送を目指す。このうち1~2時間は生放送。インターネットでも同時配信し、地元を離れた人にも復興状況を伝える。

能登初の災害FM、女川の支援で開局へ 姉失った29歳が伝える思い

「まちのラジオ」立ち上げメンバーの中には、昨年9月に地震被災地を襲った豪雨で姉を亡くした若者も。特別な黒いバッグを傍らに、どうしても伝えたいことがあるといいます。

 5月中旬には、町プロの6人が災害FMの先輩に学ぼうと、宮城県女川町での研修合宿に臨んだ。先生は東日本大震災の1カ月後から5年間にわたって「女川さいがいFM」を運営した地元住民や、それを支えた東京の放送作家たち。

 研修の目玉が、計4回の「実習放送」だ。女川駅そばのコンテナハウスのスタジオから、ラジオの本番さながらに、1時間ほどの番組をユーチューブで生配信した。

「まちのラジオ」のメンバーは「実習放送」としてユーチューブでの生配信にも取り組んだ=2025年5月18日午後0時1分、宮城県女川町、上田真由美撮影

 町野での開局に向けて、女川で練習に臨んでいること。

 女川のおいしい食事や親切にしてくれる「ホストファミリー」のこと。

 天気やイベント情報の原稿読み上げも交えながら、台本にないフリートークにも挑んだ。

 生配信中には、実際にメールやSNSでメッセージや音楽のリクエストが寄せられた。

 初日には《実習放送ファイトー》。

 2日目には《格段の進歩です…

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