川島真さん

 日本にとって長くお手本だったはずの「欧米」が揺れている。21世紀の今、隣国の中国は欧米主導の世界秩序への「挑戦者」と呼ばれている。振り返れば日本も20世紀には、同じ秩序への挑戦者とされた。欧米とは何か。そして挑戦の持つ歴史的意味は。中国政治に詳しい歴史学者の川島真さんに聞いた。

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中国政府にとっての「未知の体験」

 中国は、欧米主導の国際秩序への「挑戦者」と呼ばれています。振り返れば、第2次世界大戦を戦った前世紀の日本も、欧米中心の世界秩序への挑戦者とされました。ただし、両者の間には違いもあります。

 日本の場合は挑戦と言っても、欧米や日本がそれぞれの空間で秩序を作る形でした。日本は「大東亜共栄圏」という地域の秩序を作り、そこでは欧米の論理を排除しようとしたのです。

 他方、中国は胡錦濤(フーチンタオ)政権までは欧米がグローバルな秩序を作るとしていましたが、習近平(シーチンピン)政権で変わりました。西側の論理では世界の課題を解決できないので自ら世界秩序を創出するとして、2017年の党大会では、今世紀半ばまでに自らが国際舞台の中心に躍り出る構想を表明しました。

 この挑戦は、中国政府にとっても未知の体験です。中国は大昔に、自らが天下の中心であると言ったことはあります。しかし、たとえ中国自身はそう認識していたとしても、実際には世界全体に及ぶ秩序を作った経験はないのです。

欧米主導の世界秩序、なぜ生まれたか

 そもそも、欧米主導の世界秩…

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