映画「国宝」で歌舞伎の指導を担い、自身も出演した歌舞伎役者の中村鴈治郎(がんじろう)さんが29日、朝日カルチャーセンター(東京都新宿区)で講演した。主演の吉沢亮さん、共演の横浜流星さんの演技について「歌舞伎役者にはできない」などと語った。
映画の原作は小説「国宝」(吉田修一著、朝日新聞出版)。日本映画史上、興行収入100億円を突破した4作目となっている。
鴈治郎さんによると、役作りのために吉沢さんと横浜さんが日本舞踊を習い始めた様子を見て「こりゃダメだと思った」と言う。だが、1年半の練習で見違えるようによくなったという。
2人は映画で、歌舞伎の女形として「藤娘」や「道成寺」などを見事に演じた。「やっぱすごいですね。まあへこたれなかったですよ」と振り返った。
実際の歌舞伎役者ではない2人が演じたことについても言及。登場人物を演じながら歌舞伎の役になりきったとして、「僕らは演目の役になりきるが、2人はそこにもう一つ、喜久雄と俊介をかぶせている。これは歌舞伎役者ではできない」とたたえた。
会場には約100人が集まり、オンラインで50人以上が話を聞いた。講演には原作を監修した歌舞伎学会長の児玉竜一さんも登壇した。朝日カルチャーセンターでは児玉さんを講師に、歌舞伎についての講座を毎月開催している。
鴈治郎さんが出演する「仮名手本忠臣蔵」は、9月5日から新国立劇場(渋谷区)で始まる。