連載「101歳の手記~80年前の記憶」
戦後80年となり、体験者の肉声を聞けなくなる時が迫っています。亡くなった体験者の中には、自身の体験や思いを記録にとどめてきた人たちもいます。いまは亡き夫婦の記した手記から、足跡をたどりました。
いかりのマークが記されたはちまきを締めた青年がこちらをまっすぐ見つめる。
古いアルバムに貼られた1枚の写真。「意気で咲け桜花 俺も散らうぞ華やかに 誓ひ合って別れた友よさらば」と軍歌の一節にもある言葉を盛り込んだ一文が添えられる。
青年は、昨年101歳で亡くなった佐賀市の今泉サト子さんが戦後結婚した夫・好道さん。1945年4月、海軍に入る前に撮られた写真だ。
アルバムには、友人だろうか、別の男性の笑顔の写真とともに、「戦死」の文字も書かれる。
好道さんが60歳を過ぎて書いた手記では、戦争に駆り立てられた若者の苦悩がにじむ。
入隊避け転学したけれど
《胸には青春の夢も希望もあった》という好道さんは、41年12月8日の真珠湾攻撃の「戦果」に盛り上がる当時の状況をこう記す。
《若者にとっては「死」への脅迫でしかなかった》
好道さんは佐賀市出身。40…