東日本のある市で、路上で倒れた男性が病院で亡くなった。引き取り手が見つからず、市が火葬することになり、葬儀会社からひつぎが運び出された=2023年10月、土肥修一撮影
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 急増する「身寄りなき遺体」。全国の自治体が対応に困惑するなかで、生前の対策に取り組むところも出てきた。

 神戸市は6月から、「エンディングプラン・サポート事業」を始める。

 一人暮らしで頼れる身寄りがおらず、月収19万円以下などの要件を満たす65歳以上の人が対象で、市に協力する葬儀社と本人との間で、葬儀や納骨の生前契約を締結。事務管理費を含めて上限36万円の費用をあらかじめ本人から葬儀社に預託してもらう。

 市も契約書の写しなどを保管するとともに、年に1度は本人の状況を確認し、亡くなった後には契約通りに葬儀や納骨が行われたかを確かめる。万が一、預託した葬儀会社が倒産するなどした場合は、市が墓地埋葬法に基づいて公費で火葬・納骨することを想定しているという。

 本当に頼れる身寄りがいないのかを市が調べることはなく、申告に委ねる。

 納骨先は市の合葬墓を想定するが、上限額の範囲内であれば、葬儀の宗旨・宗派や納骨先などの希望にも応じるといい、市斎園管理課の大中雅之さんは「死後の自己決定権の保障。安寧の保証だと考えています」と話す。

 相談員が対応する窓口を、6月3日に開設する。

 神戸市でも、「身寄りなき遺体」は急増している。遺体を引き取る家族や親族が見つからず、墓地埋葬法に基づいて市が火葬し、市立墓園の保管室に搬入した遺骨は、2010年度ごろは年50件程度で推移していたが、2022年度は161件に増えた。

 人口約150万人の神戸市。65歳以上の人がいる世帯のうち、単身世帯が約37%(2020年)を占め、全国20の政令指定市のうち比率が2番目に高い。「死後の葬儀、遺骨の行き先が不安という人は少なくない」と大中さん。当初は年間40件程度、事業が軌道にのれば100件程度まで利用が増える可能性があるとみているという。

 神戸市の取り組みには、先例…

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