長廣百合子さん(左)と夫の遥さん=本人提供

 5月12日は、母の日。親になることは大きなライフイベントだが、「産後離婚」に至る人も少なくない。厚生労働省の調査によると、ひとり親になった女性の4割は子どもが0~2歳のときに離婚しており、その割合は25年ほど変わっていない。

 長廣百合子さん(40)と夫の遥(よう)さん(47)は、2015年に「ロジスタ」という子育て支援の会社を立ち上げ、夫婦の対話を深めるためのメソッド「夫婦会議」を広めている。背景には、産後離婚をしそうになった自らの経験がある。

 百合子さんは29歳の時、遥さんのプロポーズを受け入れた。

 すぐに第1子を授かり、長女を出産。産後は睡眠不足もあり、常にカリカリして体が休まらなかった。一日中パジャマ姿で過ごし、娘が泣いていても体が動かない。児童虐待のニュースを見ては、「私もこうなるんじゃないか」と追い詰められた。

 会社員だった遥さんは仕事が忙しく、出張続きだった。たまに帰宅しても、いつも午前0時過ぎ。次第に会話は減り、百合子さんの頭を「離婚」の文字がよぎるようになった。

 実は遥さんも、仕事と家庭の板挟みにあい追い詰められていた。重圧からか、仕事で大きなミスをして、大クレームを受けていた。

 ある時、遥さんは「家庭も仕事も大切にしたいのに、できない。収入がなくなるから仕事はやめられない」と言って号泣した。

 百合子さんは「もっと家庭にシフトした働き方に変えよう。私だって仕事したいし、一人で稼がなきゃと背負わなくていい」と応じ、初めて夫婦としての対話ができた気がした。

 生活スタイルが激変する産後は、とくに対話が重要な時期だ。だが忙しさの中でその時間も減り、重要な話は「くさいものにふた」になりかねない。現在は対話のための専用ノートを開発し、各地で講座を開く。

 百合子さんは、「対話できる関係があれば、どんな危機も乗り越えられる」と考えている。いま、夫婦の関係で困っていることは、「何もない」という。

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