海上保安庁の巡視船「そうや」(3100トン)に2月下旬、7日間乗船した。北海道大学の研究者らが参加して行われた、オホーツク海の海氷観測への同行取材だ。
圧巻だったのは、「そうや」の搭載ヘリから見た光景だ。高度150~600メートルの上空からの観測は約2時間。太陽の光を受けて、無数の白い氷が輝く。息をのむような光景が広がっていた。
ただ、観測に参加した研究者からは、気になる話も聞いた。
以前に比べて、氷のサイズが小さくなっているというのだ。
オホーツク海全体でみても、海面を覆う氷の面積は年々減りつつあり、温暖化の影響が指摘されている。
海氷域が最も広がったときの面積を示す「最大海氷域面積」は、10年あたり5・1万平方キロずつ減っている。これは、オホーツク海の全面積の3・2%に相当する面積だ。
流氷には鉄分が多く含まれている。北海道の沿岸に押し寄せた流氷が解けると、海中に鉄分が放出され、植物プランクトンの増殖を促す。その結果、海の生産力が高まり、豊かな海の幸が生み出されると考えられている。
つまり、流氷の減少は、私たちの食卓とも無縁ではないのだ。
さらに気になるデータもある。氷の面積だけでなく、厚みも減っている。北大の研究チームによると、オホーツク海南部の流氷は、この30年で3割も厚みが減ったと推計されるという。
海の異変は、私たちが目にする機会の少ない海面下でも、人知れず進みつつある。そのことを念頭に、今後も海洋環境をテーマにした取材を続けたい。