レッツ・スタディー!小論文編振り返り 吉見純音さん
朝日新聞「NMB48のレッツ・スタディー!」小論文編は28日、2019年5月の連載開始から5周年を迎えた。原則として3回分を1区切りとし、これまでに延べ15人のNMB48メンバーが挑戦。河合塾の小論文講師・加賀健司さんからアドバイスを受けながら、文章を磨いてきた。
小論文は、単に文章技術の向上に役立つだけではなく、自らの視野を広げ、思考を重層的なものにし、自分以外の他者との相互理解を深めていく効果もある、と加賀講師。23年8~10月の小論文編を担当した吉見純音さん(16)に振り返ってもらった。
記事後半で、吉見純音さんのサイン色紙が抽選で当たる読者プレゼントの案内を掲載しています。
「200字以内」で鍛えられ 学校の課題にあわてず

小論文編を担当したあと、通っている高校の授業で何回か、小論文を課されたんです。なんてタイムリーな、と思いましたし、小論文編で学んだことがフルに生かされました。
特定のお題をもらって、それについての自分の考えを書いたり、先生の話を聞いてそれを要約したり。字数は800~1千字くらいの課題が多く、小論文編の「200字以内」という厳しいフィールドで鍛えられた私は、十分な心の余裕をもって取り組むことができました(笑)。
ファンの方々に届ける会員制のモバイルメールの書き方も変わりました。以前は、何をどういう順序で書く、ということをさほど強くは意識していませんでしたが、今は例えば、冒頭にたわいのない話題を置き、だんだん盛り上がるポイントへと、読み手の人を引き込んでいくような書き方を心がけています。
劇場公演の話、学校生活の話。特にこれといった出来事のなかった日は、いかに平穏な1日であったかを。
一方で、私のファンの方々が読んでくれることが前提の文章と、不特定多数の人が目にする文章とでは当然、注意すべき点が異なります。
前者はあまり肩ひじ張らず、親しみやすい文体で話しかけるように書きます。堅苦しくならないように、あえて前提を省略したり、多少抽象的な表現をしたりすることも。ファンの方がそれぞれ情報を補完しながら読んでくださるものなので、それが可能になります。
一方、X(旧ツイッター)などに投稿する文章は、私のことを知らない人も読みます。不親切な文章にならないように、丁寧に、詳しく。言葉のニュアンスにも一層気を配ります。それは私の人柄を知ってもらうための入り口であり、どんな投稿も、常に誰かにとっての初対面のあいさつとなることを意識しています。
アイドルの力は「ディテールを大事にする力」

アイドルとしての私のスタートは、順風満帆というわけではありませんでした。
9期生として取り組んでいる「世代交代前夜」公演の初日ステージには立つことはできず、自分の不甲斐(ふがい)なさに打ちのめされました。
そのほかにも、思うように自分の力が出せず悔しい思いをすることもありました。
でも今は、自分なりの試行錯誤を積み重ね、周りの方々に助けてもらい、確かな手応えを感じられる機会が増えてきました。1年前では想像もできないぐらい、ステージ上で良いポジションや、こうして小論文のお仕事をいただくこともあります。
そうした経験を踏まえ、アイドルとしての力って「ファンの人たちから『この人のために頑張ろう』と思ってもらえる力」のことじゃないかな、と最近よく思います。
それは言い換えるなら、「ディテールを大切にする力」でもあるかも知れないと。
例えば劇場公演。全力でパフォーマンスをやりきって満足感をもてたとしても、終演後、お客さんをお見送りする際に気が抜けてしまっては全て台無し。

だから私は、一人ひとりのお客さんの目を見て、心からの感謝の気持ちを伝えています。
ほっとして気がゆるみやすい局面や、体力を使いきって集中力が切れがちな場面でこそ気を張って、一つひとつの所作を丁寧にしたいと思っています。
細部がおろそかになると、それが全体の印象に影響してしまう。それは文章でも同じだな、と思います。言葉の選び方、論の進め方。仮に結論がよくても、その過程でおろそかになっているものがあると、よい小論文になりません。
同時に、完璧なものは存在しないという点でも、アイドルのパフォーマンスと小論文とは似ていると感じます。どれだけ完全な作品をめざしても、人がつくるものである以上、どこかに必ずミスはあるし、改善点は生じる。私もまだまだうっかりミスをしてしまいます……。
小論文は「永遠に完成しない」 アイドルも同じ?

でも、永遠に完成しないからこそ努力を毎日続ける意味があるし、少しずつ成長していくプロセスを楽しむことができるんだと思います。
私のあとに小論文編を担当した同期の田中美空さんや、青原優花さんの小論文も読みました。2人の人柄や個性が文章にそのまま表れていて面白いし、それぞれにすごく素敵です。「文章は人を表す」だな、と改めて感じました。
アイドルとして、人として自らを磨くことが文章を磨くことに直結し、文章を磨くことが自らを磨くことにもつながるんだなと、小論文を勉強して気付きました。
吉見純音、小論文の世界をまだまだ究めたいと思っています!

◇
【アンケート】小論文編を振り返って 吉見純音さんの回答(聞き手・阪本輝昭)
昨年8~10月に担当した「小論文編」の感想や文章を書く楽しさなどについて吉見純音さんにアンケートをしました。吉見さんの回答を紹介します。
小論文へのイメージは変わった?
――小論文編を実際に担当してみて、小論文に対するイメージは変わりましたか、変わりませんでしたか。もし変わった部分があれば、教えてください。
【答】イメージは大きく変わりました。以前は「論文」の大まかなルールだけを意識して(序論、本論、結論)、自分の意見や抽象的な思いを書いていたのですが、思った以上に細かなルールがあり、具体的に、かつ簡潔に読んでいる人を納得させないといけないということがわかりました。
個人的には、よく先生からアドバイスを頂いていた、自分の意見や一般論と自分語りの境目も難しかったです。やはり一番は200字にピッタリおさめることが毎回大変でした。
印象に残っているアドバイス
――SNSなどを含むデジタル空間での発信の重要性が増し、「文章を書く」という営みはアイドルさんたちにとってますます大きな意味合いをもつようになっていると思います。
小論文編を担当したあと、文章を書くうえで留意するようになったことがもしあれば教えてください。印象に残っている加賀講師のアドバイスなども、もしあれば。
【答】小論文編を経験した後は、特に会員限定のモバイルメールを起草するうえでの意識が大きく変わりました。
毎日の夜、私はファンの方に向けて、その日の出来事、食べたもの、学校のこと、思っていること、家族のことなど……結構ガッツリと!(笑)文章を書くことが多く、それは私自身の1日の振り返りのような位置づけなのですが、前までは特に構成も何も意識せず、思いつくまま書いていました。
しかし今では、夜に届く会員制のメールであること、X(旧ツイッター)やブログのように誰でも見られるような形で公開されるものではないからこそ、読んだ人が内容に対して疑問に思ったり、不快に思ったりしても言い出せずに胸にとどめているのではないか? などの点を考えるようになりました。
長文であるからこそ、モバイルメールの特別感や身近な親しみを残しつつ、読みやすく、起承転結などの構成が整ったものにすることを一番に意識し、ひとりよがりの内容になっていないかを送る前に確認しています!
加賀先生のアドバイスで印象に残っているのは、小論文は「天声人語」ではなく「社説」だ、普遍性と説得力が重要になるというアドバイスです! なるほどなあと思いました。
文章も、しゃべるときも抽象的なことが多いので、目から鱗(うろこ)でした。
文字と会話、どっちが好き?
――若い世代は「電話」よりも、文字(絵文字を含む)によるコミュニケーションが多いといいます。しゃべること(話すこと)と、文章でやりとりをすることの二つを比べた場合、友達や家族、メンバー同士の意思疎通の方法としてはどっちが好きですか。
【答】友達や家族、メンバー同士の意思の疎通ではやはり、しゃべること、顔を見て話すことが好きだし、重要だと思います。
単なる連絡事項、決定事項、特に場所や時間などは文章でのやりとりが分かりやすいし、記録として残るので(言った言わないを避けるためにも)、LINEや文章を使うことが多いです。
しかし意思の疎通となると別です。
目を見て、顔を見て、その人の本意なのかどうか。YESと言っていても本当はNOではないのか(その逆も)ということを、ほんの少し相手の気持ちに寄り添って考えることが大事だと最近、両親にも言われました。
ついつい便利な文章だけですませてしまうことが多くなってしまいがちですが、言葉や文章に表せない表情や間、ニュアンスなども相手からくみ取っていけるようになりたいなと思います。
ファンの方からの感想は
――小論文編で書いた小論文について、ファンの方々からはどんな感想が寄せられましたか。それに接して、どのように感じましたか。
【答】もったいないぐらいのお褒めの言葉を方々からたくさんいただき、とてもうれしかったです。
それぞれのふるさとの風景と重ねてくださったり、私のこれからのアイドル人生の決意をくみ取ってくださったり、朝一番で遠くのコンビニに買いに行ってくださったり、関西以外で取り寄せてくださったり、本当に心が震えるくらいうれしかったです。
祖父母の温かさのほか、お米、野菜や果物のおいしさも伝えることができて良かったです!(笑)
文章を書く楽しさ・難しさ
――文章を書く楽しさ・難しさについて、思うところをご自由にお願いします。
【答】小さいころから本を読むことが好きで(最近は読めていないのですが)、お手紙を書いたり、日記を書いたり、作文の課題が小学生時代から多かったりしたこともあり、文章を書くという作業が私の生活の一部になっています。
昔は実は人前で話したり、はっきり面と向かって人に意見を言ったりすることが苦手で、NMB48に入ってから、だいぶ自分の意見を誰にでも言えるようになってきました。
文章は人の心を豊かにし感動させることもできるけど、一歩間違えれば言葉よりも鋭く人を傷つけてしまう、残ってしまう。
特に不特定多数の人に読んでもらっている今は、どの言葉が誰にどう伝わるのかを考えるようになり、言葉の持つ意味、文章を書くことの難しさを日々感じています。
でもやっぱり、毎日SNSやモバイルメールで文章を書くことは楽しく、文章を書くことをひとつのきっかけにして、私「吉見純音」を知ってもらうことができて幸せを感じています。
次シリーズへの意気込み
――吉見さんに次シリーズの小論文編を再びお願いすることになります。何か意気込みがありましたら、ひとことお願いします。
【答】まずは、また私を選んで下さって本当にありがとうございます!
この小論文編掲載がきっかけでNMB48や9期生、吉見純音のことを知ってもらえて、劇場公演や配信を見て下さった人がいたり、疎遠だった友人たちから連絡が来たり、昨年は大きな転機になりました。今回は、肩の力を少し抜いて……加賀先生のアドバイスを思い出しつつ、私らしく書こうと思っていますのでよろしくお願いします!!
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