今年のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)~」は、「江戸のメディア王」と言われる蔦屋重三郎が主人公です。歌麿や写楽といった浮世絵師を世に送り出した「蔦重」の魅力とは。江戸時代に詳しい歴史タレントとして知られる堀口茉純さんに、見どころなどを聞きました。
堀口茉純さん略歴
ほりぐち・ますみ 1983年、東京都足立区生まれ。明治大学卒業。江戸・歴史の何でも屋〝ほーりー〟として江戸の魅力を伝える。「TOKUGAWA15」など著書多数。ユーチューブチャンネル「ほーりーとお江戸、いいね!」は登録者10万人超。
江戸の出版文化に欠かせない蔦重
――「べらぼう」は江戸時代中期が舞台です。
私が一番好きな時代なので、毎回放送が楽しみです。これまで浮世絵や吉原に関する本を出してきましたし、幕府老中の田沼意次が好きだって言い続けてきました。江戸中期はいろんな文化が花開いた時代ですが、大河ドラマで描かれることはほとんどなかったので、いまとても幸せです。
戦国時代や幕末のように大きな戦がない時代ですが、庶民の人間関係やビジネスバトルが見どころになると思います。
――蔦屋重三郎はどんな人物ですか。
蔦重はとにかく面白い人です。新しい価値観を打ち出し、なかなか諦めない人でした。江戸時代のメディアは、幕府の規制があるのが前提です。そんな中、蔦重はこれが面白いんじゃないかと、表現をすることを諦めなかった。そこで版元として世に送り出したのが、喜多川歌麿であり、東洲斎写楽です。後世に与えた影響は大きく、江戸の出版文化を語る上で欠かせません。大河ドラマの主役にふさわしい人物です。
自らの衝動に従順な人だった、とも思います。いろんな人をつなげる才能もありました。実業家として成り上がっていくサクセスストーリーの面白さもありますが、チャレンジ精神や諦めない姿勢など、現代の私たちにとって生きるヒントになるのではないでしょうか。
蔦屋重三郎だけでなく、田沼意次、平賀源内、長谷川平蔵と、魅力的な登場人物が多い「べらぼう」。記事の後半では、消えた少年「唐丸」についても、堀口さんに語ってもらいました。
■田沼意次を「推す」理由…