伊勢湾で獲れたコウナゴ。「春の風物詩」と呼ばれていた=愛知県水産試験場提供
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 甘辛く炊いた「くぎ煮」や天ぷらなどで親しまれ、「春の風物詩」と呼ばれるイカナゴの漁獲量が全国で激減している。東海地方の伊勢湾では、コウナゴ(イカナゴの仔稚魚(しちぎょ))の試験操業でも全く水揚げがなく、この春も9年連続の禁漁が決まった。なぜいなくなったのか。(前川浩之)

 「あきませんな、これは」。三重県ばっち網漁業協同組合組合長の一尾康男さん(72)は、白子漁港(同県鈴鹿市)であきらめ顔でつぶやいた。

 3月23日、コウナゴ漁の是非を決める試験操業で、伊勢湾内の4カ所で網を引いたが、コウナゴの姿は確認できなかった。かつて試験操業はコウナゴの大きさを確認するためだったが、「今はコウナゴの気配も感じられない」。結果を愛知県側の漁協にも伝え、伊勢・三河湾のコウナゴ漁は2016年以来、9年連続の禁漁が決まった。

 伊勢湾のイカナゴは冬に湾口付近で産卵し、孵化(ふか)した仔稚魚が春にエサを求めて湾内を回遊する。春の味覚「コウナゴ」として長年獲られていたが、なぜ姿を消したのか。

「伊勢湾がきれいになったからだ」

 愛知県水産試験場の中村元彦主任によると、海水温が上がる夏になると、イカナゴは伊勢湾の入り口付近の砂場に潜って「夏眠(かみん)」する。だが2014年以降、この夏眠魚が減り、やせ始めた。やせると産卵ができず、数が減っていく。

 魚がやせて体力を奪われた背…

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