大阪・関西万博に合わせ、海外産のコメだけで醸(かも)した清酒を、酒造大手・月桂冠(京都市伏見区)が初めて開発した。地球温暖化によって酒米の栽培環境が年々厳しくなる中で、将来にわたって持続可能で世界に通用する酒造りをしたいと、若手が中心となって企画した。近く、万博会場で販売する予定だ。

 プロジェクトの合言葉は「世界の米で、世界のSAKEを」。20~30代の若手社員が中心となり、2021年から研究を始めたという。月桂冠広報課によると、国産米を一切使わず海外産だけで清酒を造る取り組みは業界でも珍しいという。

海外産のコメだけで醸した清酒を手にする間瀬雄一郎さん=2025年4月28日午後3時16分、京都市伏見区、日比野容子撮影

 研究チームのサブリーダーを務めたのは、貿易課の間瀬雄一郎さん(33)だ。大阪府南部の実家のすぐ近くに酒蔵があり、子どものころから日本酒は身近な存在だった。大学ではマーケティングを専攻。日本酒が世界各国で評判になれば日本の若者も日本酒を見直すのではないかと、月桂冠を就職先に選んだ。

 日本酒造りをめぐる環境は厳しい。若い世代の「アルコール離れ」が言われ、日本酒どころかお酒そのものを飲まなくなってきている。さらに、地球温暖化で酒米の収穫量が減ったり収穫できる産地が変わってきたり、価格が高騰したり。持続可能な酒造りを考えた時、「海外産のコメ」が選択肢に入ってきた。

 アフリカ、アジア、北南米、イタリア……。様々な国の掛け米に、これまた様々な国のこうじ米を合わせ、試行錯誤を重ねた。国産米とは異なり、発酵の進み方が「予測不能」で、細かいケアが必要だったが、「国産米とは一線を画した味わいの、面白い酒が出来ました」と間瀬さん。

海外産のコメだけで醸した清酒

 こうして生まれたベトナム産の掛け米にタイ産のこうじ米を用いた清酒は、冷やすとパイナップルのような香りが立つのが特徴だ。一方、インド産の掛け米にタイ産のこうじ米を合わせた清酒は焼きたてのバゲットやポップコーンのような香ばしい香りが口の中に広がる。間瀬さんは「いずれも国産米とは異なる個性的な味わいで、海外産のコメでもおいしい酒ができることを知っていただきたい」と語る。

 手のひらサイズの180ミリリットル入り。スクリューキャップで何度でも開け閉め可能だ。

 万博会場では、オフィシャルストア東ゲート店「MARUZEN JUNKUDO」で販売する。1320円。月桂冠大倉記念館(京都市伏見区)の売店やオンラインショップではすでに販売中で、こちらは1100円。問い合わせは月桂冠お客様相談室(0120・623・561)へ。

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