東京都が無痛分娩(ぶんべん)の費用を最大10万円助成する制度が、10月から始まります。少子化対策の一環であることに加え、「産みの苦しみ」を重視する風潮に一石を投じる動きだ、という見方もあります。

 一方、出産を経験しない男性は、「産みの苦しみ」や「父性」とどのように向き合えばいいのでしょうか。父親の育児参加を促すNPO法人「ファザーリング・ジャパン」のメンバーで、4歳と1歳の子どもを育てる古関謙さん(34)に聞きました。

妻が次女の妊娠中に切迫早産で約半年間の入院となり、長女の「ワンオペ育児」に奮闘した古関謙さん=2024年4月、古関さん提供

【アンケート実施中】「産みの苦しみ」を考える

 東京都は10月から無痛分娩に最大10万円の補助を始めます。「少子化対策の一環」である半面、「おなかを痛めて産んでこそ母性が芽生える」「出産の痛みに耐えることは美徳」といった「産みの苦しみ」を重視する傾向に一石を投じる動きだ、という見方もあります。「産みの苦しみ」をめぐる価値観について考えます。

 ――パートナーは無痛分娩を選んだそうですね。

 最初はかなり悩みました。自然分娩を経験した知人らは口をそろえて「すごく痛いよ」と言うので、当初から無痛分娩が選択肢にありました。ただ、「一度はその痛みを経験してもいい」という妻の考えもあり、自然分娩も考えていました。

 そんなころ、おなかの中の赤ちゃんを包む袋の周りに血液がたまる「絨毛(じゅうもう)膜下血腫」がわかり、妻は絶対安静に。担当医から「産後の体力回復が比較的早い」と説明を受け、無痛分娩に決めました。

 ただ、「無痛」といっても痛みを和らげる程度で、陣痛がきてもすぐには麻酔をしないため、実際は妻もかなり痛がっていました。

 ――出産の痛みが「母性の芽生え」につながるといった言説を、どう考えますか。

 母親は妊娠中から胎動を感じ…

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