九州のお茶栽培が活況だ。鹿児島県が荒茶の生産量で〝お茶王国〟静岡県を抜き、初めて全国トップを獲得した。宮崎、福岡、熊本の3県も上位に名を連ねる中、海外への販路拡大を見据えた新たな取り組みも始まっている。
4月9日、強い日差しに照らされて緑に輝く茶畑で、茶摘み機が大きな音を立てて動く。知覧茶で知られる鹿児島県南九州市では一番茶の収穫シーズンを迎えていた。
「いよいよ始まったという高揚感があります」。前原製茶の前原翔太さん(35)は収穫をうれしそうに見つめていた。
収穫後に蒸し、もみ、乾燥を加えた茶葉で製茶前の原料を指す「荒茶」。同県の2024年の生産量(2万7千トン)が静岡県(2万5800トン)を上回り、1959年の統計開始以来、初のトップとなった。悲願の「日本一」達成から初めて迎えた新茶シーズン。前原さんは「日本一は追い風。安定した値がついてほしい」と話した。
もともと後発産地だった。戦後は紅茶の産地づくりを進めたが、71年の輸入自由化で競争力を失い、「それから緑茶へ大転換を図った」と鹿児島県茶業会議所の光村徹専務理事。当時の静岡は「背中も見えないほど先を行く大、大、大産地だった」と語る。
ペットボトル飲料用の需要が好調
成長の背景には、温暖な気候…