昨年4月、生物系の研究をしていたアマネさん(当時22歳)は、父(66)と大学院の入学式に参加した。
3年前に母親を亡くし、父と兄と3人暮らし。緊張しつつも、期待に胸を膨らませる娘の姿をみて、父は誇らしく思った。
だが、異変は5月半ば過ぎに訪れた。
「大学院辛(つら)い」
夕方ごろ、アマネさんから届いたメッセージに父はぎょっとした。知人の葬儀に参列中で、時折スマホが震えているのに気づいてはいたが、見ていなかった。不在着信が3件、「送信を取り消しました」というLINEメッセージも3件、届いていた。
その前日、ゼミで研究成果の発表があると、ほぼ徹夜で資料の準備をしていた。
「うまくいかなかったのだろうか」。夜9時ごろに急いで帰宅すると、アマネさんは食卓に座り、肩を震わせ号泣していた。手にはウイスキーのボトルを持ち、ラッパ飲みをしながら。
これほど感情を表に出している娘の姿は見たことがなく、大きなショックを受けた。
「准教授にボロボロに言われた」
「これまでの研究を全否定された」
アマネさんは泣きながらぽつ…