神村学園は大会第4日の10日、木更津総合(千葉)を8―5で下し、2回戦に進んだ。六回以降に2度リードを許す苦しい展開だったが、七回に連打や敵失で一気に逆転。甲子園での初戦突破は、春夏あわせて5大会連続となった。次は大会第9日の15日、中京大中京(愛知)と対戦する。
4点リードで迎えた九回表。安打と死球で無死満塁のピンチを招いた神村学園の今村拓未投手(3年)は、マウンド上で冷静さを失わなかった。「点差はある」。続く1番打者を内野ゴロの併殺に打ち取り、1点は失ったものの、木更津総合(千葉)の勢いを断った。
今大会にかける思いは人一倍強い。昨夏の甲子園で先発登板した2回戦の市和歌山戦では、大観衆や相手打者の迫力にのまれてしまった。初回に3四死球で2死満塁として、1イニングもたずに降板した。「甲子園の借りは甲子園で返す」と心に決めた。
今春の選抜大会は背番号1で2試合に登板したが、その後調子を落とし、春の九州大会はベンチ入りメンバーから外れた。完投できるスタミナをつけるための走り込みや、体のキレやバランスを高めるダッシュや体幹トレーニングに取り組んだ。
孤独でしんどい練習に加え、試合に出られないかもしれない不安。つらい日々で支えになったのが、市和歌山戦で救援して後続を断ってくれた先輩の黒木陽琉(はる)投手の言葉だった。「次のエースはお前だから」
完投能力をつけて、夏の鹿児島大会の前に背番号1を取り戻した。決勝で完封するなど20回余を無失点。「本当のエースになった」と小田大介監督はたたえた。
この日は強打の木更津総合を相手に147球を最後まで一人で投げ抜いた。「先発して完投する」という最低限の目標は果たした。ただ、5失点には納得していない。「きょうは野手に助けてもらった」と感謝し、「本当のリベンジは次の試合で」と誓った。(宮田富士男)