Smiley face

 外科手術などで使う医療機器は、外資メーカーのものも多く、欧米の男性の手を標準に開発されていることがある。その場合、日本人の女性医師には重さや大きさなどの点で使いづらい。当事者の立場から、使いやすい機器の開発に関わる動きが出てきている。

 消化器外科の手術でよく使われる、腸管をつなぐための機器「自動吻合(ふんごう)器」もその一つだ。

 「手動式のものと比べて、合併症や再入院率が減少した」――。電動式の自動吻合器に関するそんな論文が出版されたのは2022年4月のことだ。手術成績が向上し、外科医からは「使いやすくなった」「安心して手術ができるようになった」との声があがっているという。

 開発の陰には、ある日本人女性外科医の10年以上の奮闘があった。

握力足りず「使いづらい」

 自動吻合器は、カッターとホチキスが合体したような機器で、ハンドル部分を強く握ると、円状に20~30個のホチキスがとまると同時にカッターで切り離しが行われ、腸管をつなぐことができる。

写真・図版
握るタイプの自動吻合器。手が小さく、握力が弱い人にとっては片手で握るのは難しいという問題があった=東京都千代田区

 ただ、もともと手動のものしかなく、一気に数十個のホチキスをとめるため、かなりの握力が必要だった。大阪医科薬科大学の助教で、消化器外科医の河野恵美子さんは長年、「硬くて使いづらい」と不便を感じていた。

 河野さんは片手では握力が足りなかった。かといって両手で握ると先端部分を支えられず、先端がぶれやすくなってしまった。

 この操作が甘いとうまく縫い…

共有