中世キリスト教世界で唯一とされる女性歴史家を主人公にしたマンガ「アンナ・コムネナ」(星海社)が2月に完結した。東地中海世界で栄華を誇ったビザンツ帝国を舞台に、当時は「男の学問」とされていた歴史叙述に挑んだ皇女の一生を描いた。
「一度お産をするくらいなら三度戦場に立つほうがまし」。妊娠中の妻を遠征に同行させようとする弟ヨハネスに対し、主人公の皇女アンナ・コムネナはギリシャ悲劇の一節を引用しながら反論する(単行本第4巻)。
皇帝アレクシオス(アレクシアス)1世の長女アンナ(1083~1153年ごろ?)が晩年、父の業績について著した歴史書「アレクシアス」では、遠征先でヨハネスの子が生まれたと記されている。作者の佐藤二葉さん(38)はこのエピソードを、アンナと帝位をめぐり対立するヨハネスとの「名誉か命か」をめぐる激しい議論に仕立てた。「当時の社会ではたたえられたような行動も、現代から見ると疑問を抱くものもある。その背景に何があったのか、考えながら描いた」。アンナのライバルであるヨハネスの心情も掘り下げ、最終巻の劇的な展開にもつなげた。
2021年に第1巻が出版さ…