松本駅前の洋食店「どんぐり」(長野県松本市)は約30年前、テレビドラマ「白線流し」に登場したことで知られる。創業70年以上で、2代目店主の浅田修吉さん(67)はその時、ヒロインたちから学園祭のスポンサーを求められる役として一瞬、出演した。ほかに、別の顔もある。

洋食店「どんぐり」店主の浅田修吉さん=2025年6月10日、長野県松本市、小山裕一撮影

 昨年1月1日夕、石川県・能登半島で最大震度7の地震が発生した。松本市内の自宅で新年を祝い、酒を飲んでいた浅田さんも、激しい揺れに気づいた。松本は震度4。間もなく、仲間である寺の住職から電話があった。「すぐに炊き出しの準備をした方がいいかもしれない」。寺同士のネットワークで、能登半島の被災情報を入手していた。

 浅田さんは、住職やトラック運転手ら5人ほどで「松本市炊き出し隊みらい」というグループを作り、被災地で食事を提供する活動をしている。すぐに、トラックや食材、燃料などを調達する準備に入った。直径約1メートルの鍋や食缶、バーナーなどの備品は自宅近くの倉庫で保管してある。炊き出しに必要な食材は、正月休みのため調達にやや時間がかかったが数日後、5人はトラックとワゴン車に乗り、能登半島に向けて出発した。

店は若手に任せ、能登半島へ16回 店のメニューも

 「プロの料理人である自分だ…

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