ブックディレクター 幅允孝さん

特集「あなたに贈る本」

 俳優や作家、経営者など各界の皆さんにお薦めの本を紹介していただく特集「あなたに贈る本」。ブックディレクターとして図書館などのライブラリーの選書や企画などを手がける幅允孝(はば・よしたか)さんが、若い世代に向けて読書のだいご味を語り、3冊の本を紹介します。

 最後に、作家や編集者、書店員らと交流する文化通信社のオンラインコミュニティーの紹介や、6月13日応募締め切りのお薦め本プレゼント(抽選)のお知らせもあります。

読みたい本を自発的に

 母親が近代文学好きだったので家にはそこそこ本がありました。白樺派の武者小路実篤、志賀直哉、有島武郎、等々。中にはセクシュアルな作品もあり、母から「読んじゃだめ」と言われながらも、小学校高学年の自分は好奇心旺盛。川端康成の「片腕」は衝撃でしたね。視覚に頼らず、文章だけでよくあの艶(なま)めかしい描写が書けるものだと興奮したのを覚えています。

 仕事柄、多読で専門的と思われがちですが、そうでもないんです。「読まなきゃいけないから読む」はしたくなくて、無理に共有もしない。「読みたい本を自発的に独り読む」のスタンスです。3歳から18歳まで水泳をしていて、泳ぎは「外に向かうエネルギー」、読書は自分の「内側を見つめる行為」で、うまくバランスが取れていたと思います。読んだ本のジャンルもバラバラで雑食。ちなみに今でも結構速く泳げます。

 「難しい」と感じる本はたくさんありました。10代後半に読んだガブリエル・ガルシア=マルケスの「百年の孤独」。ストーリーは面白いのですが、登場人物が親族ばかりゆえ名前が似ていて、混乱するのです。書き手の意図でしょうが。当時は家系図がなく、自作したそれを照らし合わせながら何度も読み返したのを覚えています。

 それまで、読書は「何か」を…

共有
Exit mobile version