「蔵王の樹氷」の元になる針葉樹オオシラビソを山形大教員が国の許可を得ずに伐採していた問題で、同大は5日、記者会見を開き詳細を明らかにした。国が内容に不備があると申請を受理しなかったのに対し、教員は「山形県の許可があればいい」と誤解し、伐採していたなどと説明した。
山形大は、学術研究院の教員(農学部主担当)がオオシラビソの枯損木56本を無断伐採したと3日発表。この日の会見で玉手英利学長と渡部徹農学部長は、教員と山形森林管理署側から聞き取った内容を明らかにした。
現場は蔵王ロープウェイ地蔵山頂駅(標高1661メートル)周辺の国有林で蔵王国定公園内にある。特別保護地区にも指定されており、自然公園法に基づく県の許可も必要だった。
説明によると、教員は4月に山形森林管理署を訪れ、伐採の許可を申請した。森林管理署は本数が100本と多く、場所も目立つため内容を見直すよう求め、県の許可が必要なことも指摘。一方、教員は県の許可があれば伐採できると判断し、9月6日に県に申請、同30日に許可を得ていた。
10月29日に研究室の学生2人、同大技術職員2人の計4人が約20ヘクタールの範囲にある56本をチェーンソーで伐採し、厚さ約2センチに輪切りしたサンプルを持ち帰った。教員はいなかった。その際、巡回中の森林管理署職員が許可の有無を尋ねると、学生が県の許可書類を示したという。
教員は2019年から虫による食害などで立ち枯れが広がるオオシラビソの保全に向けて研究し、伐採は初めてだった。
渡部農学部長は「教員は非常に反省している。現時点で法令などによる罰則はないと聞いている」と話した。木のサンプルは森林管理署に返すが、「研究の意義を理解していただき、研究を続けたいというのが私たちの気持ち。森林管理署と丁寧な打ち合わせをしたい」と話した。