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岩木健康増進プロジェクトの健診の様子。唾液を採取して口の中の状態を調べる=2025年5月31日午前11時3分、青森県弘前市、姫野直行撮影

 約3千項目もの検査を行う健康診断が青森県弘前市の岩木地区で31日、始まった。一般的な健診項目に加え、口の中や自律神経の状態など様々な検査をするのが特徴だ。今年で21回目。病気になっていない人も含めた住民多数の長年にわたる膨大な健診データは、超多項目の健康ビッグデータとなり、様々な研究結果につながっている。

 岩木山のふもとに近い弘前市岩木地区。午前6時30分から健診会場となる中央公民館岩木館と岩木文化センターあそべーるに続々と住民がやってきた。受付を済ませるとQRコードが付いた番号札を受け取り、順番に検査を受けていく。

 初日の5月31日は、約130人が予約していた。一般的な健診項目のほかに様々な検査を受けるため、検査が終わるまでに4時間かかる。血液検査では15本分採血。動脈硬化の程度が分かる四肢血圧の測定などもある。握力などの体力測定や、車の運転技能検査もある。

 また、口の中の状態が全身の健康にも影響することがわかってきており、あごや口の機能、発語、口の中の粘膜、虫歯菌なども細かくチェックする。唾液(だえき)を採取して含まれる遺伝子の「メチル化」を調べることで老化度がわかる検査もある。

 普段聞きにくいデータも集めている。男性の加齢に伴うアンケートでは、「勃起してそれを維持する自信はどの程度ありますか」など性機能に関する泌尿器科の質問もある。アンケートは口頭ではなく、タブレットで回答する。

 弘前市の会社役員、村上公洋さん(47)は以前にこの健診で胃がんの原因となるピロリ菌がいる可能性を指摘され、早期に除菌療法を受けることができたという。村上さんは「自分の体のことがよく分かるのが良い。あとで結果が来るが、難しいので読み込むのに時間がかかる」と話した。

 この健診に当初から関わる弘前大学の中路重之特別顧問は「始めた当初は検査項目の多さに『バカみたい』と言われたこともあった。しかし、ビッグデータのおかげで、従来の仮説検証型の研究ではなく、仮説探求型の研究ができるようになった。この取り組みを続けて『短命県返上』を目指したい」と話した。

 健診は10日間で約1300人が受診する予定だ。弘前大学医学部が総出で運営し、医師や看護師ら医療職のほか、学生、市職員、市民など計約300人が関わっているという。

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 岩木健康増進プロジェクトの健診で得られる健康ビッグデータは、多くの最新研究につながり、たくさんの企業が注目している。

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