年を取り、障害を持つ子の面倒をみられなくなったら、どうすればいいのか――。障害者の介護の問題は、家族が直面する共通の悩みだ。東京都は対策に乗り出し、危機感を抱いた障害者の家族も自ら解決策を模索している。
小金井市で暮らす増村幸子さん(92)と、長男の村田雅英さん(62)の生活が一変したのは20年前のことだ。雅英さんが、趣味のバイクのレース中に突然倒れ、心肺が停止した。くも膜下出血だった。電気ショックで蘇生したものの、意識は戻らなかった。
「生きてくれれば、どんなことでも」
幸子さんは「生きてくれれば、どんなことでもする」と祈り続けた。思いが通じ、約10日後に意識が戻ったが脳の障害と左半身のまひが残った。高次脳機能障害だった。
集中力が続かず、新しいことを覚えられない。失語症にもなり、道にも迷うようになった。一人暮らしをしていた雅英さんと、幸子さんは同居を始め、二人三脚の日々が始まった。
日中、雅英さんは日帰りで介護を受ける「デイサービス」を週3回利用。家にいるときは洗濯を手伝うなどしている。苦労しつつも、「親子で助け合う、穏やかな暮らし」(幸子さん)を重ねてきた。
22日に投開票される東京都議選(定数127)を前に、東京が抱えるさまざまな課題の現場を取材します。
「世話ができなくなったら」 押しつぶされる不安
ただ、お互い年を取り、幸子さんは最近、不安に押しつぶされそうになることがある。そのうち、雅英さんの世話が出来なくなり、自分は高齢者施設に。雅英さんは障害者施設に入ることになる――。雅英さんが施設になじめず、症状が悪化するのではないかと懸念する。
こうした状況に直面している…