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骨格の違いが分かる展示物(左から弥生人、縄文人、旧石器人)と写真に納まる篠田謙一館長=東京都台東区の国立科学博物館、上田幸一撮影

 古代に生きた人類の骨に残るDNAを解読できるようになり、ホモサピエンスがどのように世界に広がって定着していったのか、解明が進んでいる。「私たちはどこから来たのか」「私たちは何者なのか」。そんな究極の問いに答えは出るのだろうか。人類学の第一人者である国立科学博物館の館長に聞いた。

ネアンデルタール人は絶滅していない?

 ――人類学は大当たりの時代を迎えているといいますが、何が起きているのですか?

 「近年、古代の人骨のDNAを詳細に調べることができるようになったことで、人類の起源と拡散について未知の事実が明らかになり、さらに詳細な情報も次々と判明しています。それまでは、古い骨を調べて形が似ている、似ていないという類推しかできなかったのです」

 「画期的なのは、我々現代人には絶滅したネアンデルタール人のDNAが入っていることがわかったことです。この業績でドイツのスバンテ・ペーボ博士が2022年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。ちなみに日本人はネアンデルタール人のDNAを1~3%程度持っていることが判明しています。新型コロナ感染症が重症化しやすいタイプの形質はネアンデルタール人から受け継いだ遺伝子に由来していることもわかりました。なぜ重症化する人としない人がいるのかを調べる手がかりとなる発見です」

 ――私たちが遺伝子を受け継いでいるということは、ネアンデルタール人は「絶滅していない」ということですか?

 「これは絶滅という言葉の定義となりますが、遺伝子が現在まで残っているという意味では、その通りです。現代人に残るネアンデルタール人の遺伝子をすべて集めると、彼らの全ゲノムの30%から70%ほどになると言われています」

 ――ネアンデルタール人の他にも、現代人のDNAに遺伝子を残している過去の人類はいるのですか。

姿形が分かっていない人類のDNAを引き継ぐ現代人

 「ええ、います。ロシアのデ…

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