甘酸っぱく、ほろ苦く。子どものときの日記や手紙は、読み返すといろんな味がこみあげる。「青春の蹉跌(さてつ)」と呼ぶべき文章をもとに、ドラマをつくったら? 劇作家は腕をふるい、役者は頭と体で取っ組み合う。
横山拓也には、大事な思い出がある。中2まで過ごした千葉から大阪へ引っ越す際、同級生4人と文通を始めた。最も長く続いた女子には、淡い恋心を抱いていた。やがて互いの恋愛や夢を手紙で語るようになり、友達となっていく。
「やりとりのなかで滑稽なことってたくさんあるし、夜中の勢いで書いた文面もあっただろうし」。くすぐったい記憶から想像を広げ、新作戯曲「ワタシタチはモノガタリ」ができた。
富子は中3で転校した文芸部の同級生、徳人(松尾諭)が好きだった。文通を続けるも、徳人は30歳で結婚する。40歳になった作家志望の富子は、当時の手紙のやりとりを元に小説を書き、SNSで評判に。映画化が企画される一方、編集者になった徳人は反対する。結局、2人で脚本をつくることになり……。
「わかりやすいな」。富子を演じる江口のりこは、まずそう感じた。直前までシェークスピア劇に出ていた。「今の時代を生きてる人たちの話だから。不条理でもないし」
次に浮かんだのは「難しいなあ」。稽古から地方公演まで2カ月以上。「飽きないか?」
ところが。読めばわかりやす…