現場へ! 移民・難民 揺れる英国(3)
あまりに強い言葉に、多くの英国民が反応した。5月12日、首相のスターマーが会見で述べた発言のことだ。
「フェアなルールがなければ、私たちは『ストレンジャーたちの島』(an island of strangers)になってしまうおそれがある」
「見知らぬ人」「よそ者」「流れ者」。ストレンジャーにはそうした意味があり、ネガティブな文脈で用いられることも多い。一部の国民は、1968年に大きな議論を呼んだ保守党議員イーノック・パウエルの演説を想起した。「既存の市民が、自分たちの国で(自分たちのことを)ストレンジャーと感じるようになった」。パウエルはそう言い、移民に強く反対した。
英キングス・カレッジ・ロンドンの教授、ジョナサン・ポルテスは「非常に不適切な表現だった」と批判する。「移民が深刻な社会問題であるかのように示唆することは、極めて危険だ」
労働党政権の姿勢も変化
労働党は政権交代を果たした昨年7月の総選挙の公約集で、移民の入国者数から出国者数を引いた純増数を減らすとうたっていた。そのうえで、移民が経済や公共サービス、コミュニティーの発展に寄与している、とも記していた。だが、そうした姿勢は、1年も経たずに変化したと評されている。
調査会社ユーガブによると、スターマー氏の発言について「同意し、言葉遣いにも問題はない」と答えた国民は41%に上った。「同意しないし、言葉遣いは適切ではない」は18%にとどまった。
ユーガブは別の調査で、「あなた自身は移民に賛成か、反対か」と尋ねたところ、結果は「とても/どちらかというと賛成」が29%に対し、「とても/どちらかというと反対」が41%と大きく上回った。
合法的に入国したか否かに関わらず、4割超が移民に反対しているという調査は、いまの英国民の意識を映し出す。そして、選挙の結果にも影響を与える。
「ストレンジャー」発言の1…