Smiley face
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手話でスピーチをする桜花学園高等学校の黒田優子さん=2025年8月31日、東京都千代田区、井手さゆり撮影

論説委員コラム「序破急」

 手話では勝負できないから、笑いをとる――。そんな決意で臨んだという。

 8月末に都内で開かれた全国高校生の手話によるスピーチコンテストで、審査の末席に座った。入賞は逃したが、桜花学園高校(名古屋市)3年生の黒田優子さん(17)のスピーチが印象的だった。

 ユーモアでシリアスな話を包み込んで秀逸な構成でしたね。表彰式の後にそう伝えると、「母が大阪出身なんです。一人でも笑ってくれたら勝ち、と思ってました」と黒田さんは笑顔を見せた。

 彼女の将来の夢は、学校の先生だ。でも、普通じゃ飽き足らない。長い髪をかきあげて、長いネイルをして、ヒールを履いて、コーヒーが似合うような、かっこいい先生になりたいのだ。しかし、様々な「問題」が立ちふさがる。

 暑くて髪が伸ばせない。爪がうすくて折れてしまう。ハイヒールを履けば足をくじく。苦いコーヒーは飲めない。でも、より大きな問題は「学校が苦手なこと」だ……。

 中学2年の時に不登校になっ…

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