サリドマイド薬害で被害を受けた人の平均年齢が60歳を超えた。睡眠薬や胃腸薬として販売され、妊婦がのむと障害のある子どもが生まれる事例が相次いで報告されたが、日本では回収が遅れた。被害者の苦しみは今も続いている。
「私の笑顔を返して」
河口智彦(としひこ)さん(62)の切実な願いだ。サリドマイドの影響で、生まれつき、顔の神経にまひがある。表情をつくることが難しく、笑顔の写真は1枚もない。
日常生活にも支障がある。口を閉じられないため、食事のときはこぼれないようにお皿やおわんを近づける。つばが出ると、涙も出る。まばたきができず、寝るときもうっすら目を開けたままだ。鼻も曲がっていて狭く、口呼吸しかできない。
河口さんには、耳もない。6…