帝国の幻影~壊れゆく世界秩序~「勢力圏」のはざまで【3】
米国の領土拡張への意欲を示す一方で、ウクライナを侵略するロシア寄りの姿勢を見せる――。トランプ米大統領はなぜ、米国が戦後に主導して築いた国際秩序を壊すような動きをするのか。世界は、大国が自らの勢力圏を決める帝国主義的な時代に戻ろうとしているのか。国際政治学者の遠藤乾・東京大学教授に聞きました。
- 【前回はこちら】「領土を広げる」誓ったトランプ氏 もう以前のアメリカには戻らない
――トランプ氏の復権後、ルールに基づく国際秩序が揺らいでいます。
国際秩序が安定するためには、ぬきんでた力をもつ「世界帝国」あるいは大国間の協調が必要です。第2次大戦後の米国は「植民地なき帝国」として、軍事力のみならず経済や文化についても圧倒的な力を持っていました。法の支配、人権、自由、民主主義、市場など、米国が掲げるもののなかに、他国(民)もある種の「正しさ」を感じ取って受容し、支えることで、国際秩序は中長期的に安定してきました。
「正しさ」に関心ないトランプ氏の外交
2003年のイラク侵攻の後…