米ブルームバーグなどは3日、トランプ大統領がヘグセス国防長官に対し、ウクライナへの軍事支援を一時的に停止するよう命じたと報じました。トランプ氏とウクライナのゼレンスキー大統領との会談決裂を受けた措置とみられます。陸上総隊司令官を務めた高田克樹元陸将は「このままではウクライナは夏までしかもたない。ゼレンスキー氏は米国の戦略を理解し、一刻も早く米国との交渉テーブルに戻った方が良い」と語ります。
- トランプ大統領、ウクライナ軍事支援の一時停止を指示 「誠意」判断
――米国はウクライナに対する軍事支援で、どのような役割を担ってきたのでしょうか。
バイデン前政権は完全にウクライナを勝たせるほどの支援は行ってきませんでした。支援の量と質、タイミング、最終的には使用方法に至るまで統制して、第3次世界大戦が引き起こされないよう、ロシアが戦術核を使わないよう、気を配ってきました。それでも米国の支援は、ウクライナの戦争継続に絶対不可欠なものでした。
――どの点が「絶対不可欠」なのですか。
まず、米国はロシアがウクライナ南部クリミア半島を強制併合した2014年から、22年の全面侵攻に至るまでの8年間、ウクライナを支援していました。主な内容の一つが、サイバー攻撃への対処です。ウクライナにサイバー攻撃への対処要領を教え、ウクライナの重要サーバーを西側に移すなどしました。これが、22年2月の開戦時に、ロシアのサイバー攻撃が十分効果を上げなかった理由です。
ただ、ウクライナは現在、サイバー防衛を独自に運営するには至っていないようです。米政府の要員が米本土で、サイバーパトロールやロシアのサイバー攻撃を無力化していると思います。
また、ウクライナ軍は攻撃目標の選定を、米データ解析企業のパランティア・テクノロジーズに頼っています。同社は23年時点で、1日に300カ所の攻撃目標を選び、優先順位をつけていました。現在はこの能力が1時間80目標にまで上がっているそうです。民間企業ですが、米政府が支援を停止すれば影響を受けざるを得ないでしょう。
ウクライナ軍は、長距離ドローン(無人機)の攻撃目標の選定も難しくなります。衛星情報が必要になるからです。
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