自民党の西田昌司参院議員が、ひめゆりの塔(沖縄県)の説明内容を「歴史の書き換え」と批判し、「自分たちが納得できる歴史を作らないと」と訴えた。政治家による歴史の政治利用を、どう考えればよいのだろう。欧州の「歴史修正主義」問題に詳しい歴史学者の武井彩佳さんに聞いた。
ネタニヤフ首相が語った「パレスチナ指導者のせい」
――「ひめゆりの塔」の説明内容について自民党の西田昌司参院議員が「歴史の書き換え」などと批判し「納得できる歴史を作らないと」と訴えた事例から、何を連想しましたか。
「イスラエルのネタニヤフ首相がおこなった2015年の発言を思い出しました。ナチスドイツによるユダヤ人虐殺は、アラブ人のパレスチナ宗教指導者だったフセイニがヒトラーをそそのかしたせいで起きたものだ、とする発言でした」
――パレスチナ宗教指導者のせいでユダヤ人は虐殺されたとする主張ですか。
「そうです。ヒトラーは当初ユダヤ人の抹殺を考えてはおらず、『追放』しようとしていただけだったのに、追放されたユダヤ人がパレスチナに押し寄せて来ることを恐れたフセイニが1941年にヒトラーに『焼いてしまえ』と吹き込んだために虐殺が起きてしまった――ネタニヤフ氏はそう言いました」
「しかし実際には、フセイニが虐殺で中心的役割を果たした事実はないとするのが歴史学の常識です」
政治的発言が出るわけ 歴史事実は?
――なぜ彼は、そんな発言をしたのでしょうか。
「明らかに政治的な意図のあ…