水戸といえば、水戸納豆。なかでも稲わらを筒状に束ねた「わらつと」に包まれた高級品のわら納豆は「納豆の王様」とも呼ばれる。しかし、長年わら納豆を販売してきた老舗メーカーが販売を一時中止する事態に追い込まれた。一体何が起きているのか。
稲わらに包んだ納豆を水戸で初めて商品化したと伝わる天狗(てんぐ)納豆総本家・笹沼五郎商店(水戸市)は、19日から段階的に名物商品「わらつと納豆」の販売を一時取りやめる。
笹沼寛社長(51)は「135年間絶やさず伝統を守ってきたのに、こんなことになって残念」と肩を落とす。
茨城県で納豆の製造・販売が始まったのは明治時代。1889(明治22)年に笹沼社長の祖先にあたる笹沼清左衛門氏が、水戸鉄道(当時)の開通でにぎわう水戸駅前で販売し、「納豆といえば水戸」というイメージを全国に広げたとされる。
「一度食べたらやめられない」
稲わらには納豆菌が付着しており、大豆を煮て包むと発酵して納豆になる。わらの香りが納豆に移り、懐かしい風味が食欲をそそる。わらに包むことで豆の水分が吸収され、かために仕上がる歯ごたえも魅力の一つだ。
現在では白い発泡スチロールのパックに入った納豆が主流だが、「わら納豆にはパック納豆にはない香りと食感があり、一度食べたらやめられない中毒性がある」(笹沼社長)。
「わらつと納豆」は70グラム入りで1本270円(税込み)。40~50グラム入り3パック100円程度のパック納豆と比べて価格は高いが、年間15万本ほど売れる主力商品だ。
その主力商品が販売停止に追い込まれたのは、肝心の稲わらが手に入りにくくなったからだ。
東京ドームの広さの田のわらが必要だが
「わらつと」には長さ約80…