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稼働を始めた純国産超伝導量子コンピューターと開発の指揮を執った大阪大の根来誠教授=2025年7月28日、阪大豊中キャンパス、水戸部六美撮影

 主な構成要素がすべて国内で開発・製造された144量子ビットの「純国産超伝導量子コンピューター」が大阪大学で稼働した。製造に必要な技術が国内でそろい、統合して動くことが示された。量産化や大規模化の出発点となりそうだ。大阪・関西万博では、クラウド経由で操作体験ができるという。

 量子コンピューターは、ミクロな世界の物理法則である「量子力学」をつかった次世代計算機。量子特有の「0と1の重ね合わせ」状態を利用することで、計算が飛躍的に高速化できるとされる。

 基本部品である「量子ビット」の種類で方式が分かれるが、世界的に開発が盛んなのは、超伝導回路でつくる「超伝導量子コンピューター」だ。

 超伝導量子ビットは、理化学研究所量子コンピュータ研究センター長の中村泰信さんらが、1999年に世界で初めて実現。2023年には理研などが開発した64量子ビットチップ搭載の国産初号機が誕生した。

 ただし、量子ビットがのったチップはあくまで計算機の心臓部。ほかにもユーザーの指令を量子ビット上の計算に翻訳するソフトウェアや、ケーブルを介して量子ビットと信号をやりとりする「制御装置」、正しく計算するためにチップを極低温にする「希釈冷凍機」などが必要だ。理研の初号機は主な構成要素のうち、希釈冷凍機が海外製だった。

 純国産機は7月28日に阪大で稼働を始めた。チップ、制御装置、ソフトウェアに続き、希釈冷凍機も国産に成功。これで主な要素すべてが日本製になったという。

企業の技術を集結、日本式開発でトップを狙う

 この冷凍機は、低温機器など…

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