柿渋染めに挑戦した大垣商業高校の生徒たち=2025年6月29日午後2時32分、岐阜県池田町舟子、松永佳伸撮影

 柿渋の魅力を発信して伝統を守ろうと、岐阜県立大垣商業高校の生徒たちが、柿渋染めのキットづくりに乗り出した。6月下旬には代表の生徒5人が同県池田町の製造工場を訪れ、柿渋染めに初めて挑戦。想像以上の出来栄えに手応えをつかんだ様子で、生徒たちの柔軟な発想を生かし、手軽に楽しめる商品づくりをめざすという。

 柿渋は、色づく前の柿を収穫して粉砕機で細かくし、果汁を搾り、大きなタンクで1年間以上かけて発酵、熟成させてつくられる。防腐や防水、消臭、抗菌効果があり、伝統工芸の伊勢型紙や和傘、漁網のほか、染め物や塗料などに使われている。

 この地方の柿渋は美濃渋と呼ばれ、京都・山城渋、広島・備後渋と並ぶ3大産地の一つだったが、県内で製造しているのは2軒だけだ。

 昭和初期から続く製造工場3代目の野原森夫さん(56)=池田町舟子=と、地元で柿渋染めを手がける金子悟さん(41)は、危機感を募らせていて、柿渋の魅力を広く知ってもらう手立てを模索していた。

 大垣商業高校では、2年前から持続可能な開発目標(SDGs)について学んでおり、廃棄される服などのアップサイクル(再生)に取り組んできた。

 今年度は、全校生徒が参加する課外活動「DSB部」の一環として、地域の課題解決に取り組むことに。古くなった服などを染め直し、長く使い続けてもらうことで環境負荷を減らす「服の地産地消」を提案した。

 このテーマと、「柿渋の需要拡大を図るには、使ってもらい、その良さを知ってもらうことが大切」という野原さんの思惑が一致。まずは、柿渋染めを手軽に家庭などでできるキットづくりに取り組むことにした。

 生徒たちは、手始めとして柿渋染めを体験するため、野原さんの工場を訪れた。柿渋と水を1対1の割合で混ぜた染色用の柿渋液をつくり、持参したTシャツやタオル、手提げカバンを5分ほど浸した。

 色止めをして発色を定着させるため、媒染液に色が変わるまでつけ、水で洗い流すと完成だ。今回は、鉄と消石灰の2種類の媒染液をつくり、染めた時の色の違いなどを確認した。

 体験した2年生の安田実桜さんは「思っていたよりかっこよく仕上がり楽しかった。みんなに広める方法を考えていきたい」と話した。

 柿渋染めの指導をした金子さんは「簡単に楽しめるいいものを届けたい。柿渋は地元の宝。みんなの柔軟な発想で商品を開発してほしい」と期待を寄せた。

 同高校では、染め付けキットの開発と並行して、特別支援学校の生徒がつくった布製品を柿渋で染めるワークショップの開催も検討している。

 DSB部の大橋絵美教諭は「まずは自分たちができることから取り組んで地域の課題解決につなげていきたい」と話す。

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