パレスチナ自治区ガザでの1年以上にわたるイスラム組織ハマスとの戦闘や、レバノンへの地上侵攻など、多正面の軍事作戦を続けるイスラエルで、兵力をめぐる議論が持ち上がっている。イスラエル最高裁が政府に対し、事実上兵役が免除されてきたユダヤ教超正統派を徴兵するよう命じる判決を下した。政権への影響力を持つ超正統派は徴兵に反対しており、政権運営にも影響を与えかねない事態になっている。
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「魂を捧げて徴兵令に反対しなければならない」。エルサレム中心部にあるイスラエル軍の募兵事務所近くに、超正統派の貼り紙があった。この場所では今年8月、超正統派の人々による徴兵反対の大規模デモも行われた。
最高裁は6月、政府に対し、超正統派の「イェシバ」と呼ばれる神学校に通う男子学生の徴兵を命じる判決を下した。兵役義務のある一般のイスラエル人と超正統派を区別できる法の枠組みは「存在しない」と判断した。
国民皆兵制を敷くイスラエルでは、男女ともに原則18歳で徴兵され、男性は32カ月、女性は24カ月間の兵役に就く。一方、ユダヤ教徒の多いイスラエル国内で、聖書の教えを最も厳格に守る超正統派は1948年の建国以来、事実上兵役を免除されてきた。一生をかけてユダヤ教義を学んでいることや、宗教上の配慮が理由だった。
超正統派の人々は子どもの頃から男女別の神学校に通い、男性の多くは卒業後も仕事をせずに宗教を学ぶ。このため、貧困世帯も多く、政府から補助金が支給されている。
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