力投する柴田の阿部=2025年7月19日午前10時6分、石巻市民、岸めぐみ撮影

 (19日、第107回全国高校野球選手権宮城大会3回戦 仙台育英2―0柴田)

 「流れを切ろう」。四回、仙台育英の4番打者に2点適時打を許した後、柴田の阿部快投手(3年)が投げたのは、2回戦まで一度も投げていなかったフォークだった。

 鋭く落ちる球を交えて的を絞らせず、後続を2連続三振に抑えた。「相手がデータを取ってくるのは分かっていたので、隠しておきました」。試合後に明かした。

 最速147キロの好投手だが、マウンド上での振る舞いが課題だった。春の県大会の初戦では、九回に失策で先頭打者に出塁を許すと、3点を取られてサヨナラ負けを喫した。失策が出ると表情に出て、雰囲気を悪くしてしまう。安井大悟監督から「今の君のピッチングでは周りはついてこない」と説かれた。

 迎えた夏、味方の失策で走者を出しても9回を淡々と投げ続けた。言動で引っ張るのは苦手だが、「みんなが打てないときは自分が打つ。他のピッチャーが抑えられなかったら自分が抑えるというように背中で見せる」。

 得点には結びつかなかったものの、打っては3安打の活躍だった。

 昨夏も準々決勝で仙台育英とあたり、5―1で敗退。阿部投手は途中登板し2回無失点だったものの、再戦に燃えていた。ノーシードから勝ち進みつかんだカード。「育英と戦い、最後まで粘って散ることができたのでよかった」。試合後の目に涙はなかった。

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