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恵庭北の佐々叶真選手(左)と遼弥選手=2025年6月23日、札幌円山、朽木誠一郎撮影
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(23日、第107回全国高校野球選手権南北海道大会札幌地区1回戦 札幌静修12―2恵庭北 7回コールド)

 3年の春にスタメンから外れ、落ち込む兄に「背番号がすべてじゃないよ」と声をかけた。同じチームで、1学年下の自分は、1年の秋から試合に出場している。夏を前に兄はスタメンを取り戻した。そんな兄が今、一塁にいる。打席は、自分に回ってきた――。

 6点を追う二回裏。恵庭北の5番打者・佐々叶真選手(3年)が四球で出塁。一死後、弟の遼弥選手(2年)が打席に立った。

 スタメンを外れて以来、毎朝のように1人で1時間の打撃練習をしていた兄の姿が思い浮かんだ。「兄をホームにかえしたい」。振り抜いた打球は三遊間を抜けた。しかし、後続が2三振。この回の反撃はならなかった。

 遼弥選手は試合後、「本当は野手の頭を越える適時打を打ちたかった」と、悔しさをにじませたが、「兄を進塁させることができてよかった」とも。小学生の頃から、兄と一緒に野球をしてきた。中学でやめようと思った野球を続け、恵庭北に進学したのも兄がいたからだ。兄弟で出場した最後の試合に「兄の引退は寂しい」。

 一方、野球を離れる叶真選手は、「卒業後はしっかり勉強して、将来はプロ野球のトレーナーになりたい」。いずれ球場に戻るつもりだ。

 言うことを聞かなくて、ケンカになることもあった弟は、野球を通じて、いつの間にか心の支えになった。この日、2安打を放った弟を見て「来年夏の活躍を、たのしみにしたい」と話した。

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