大阪・関西万博の西ゲート脇に壁画を描いたバキバキさん=2025年5月29日午後3時3分、大阪市此花区、岡純太郎撮影

夢洲から

 大阪・関西万博の西ゲート脇の高さ4.5メートル、幅12メートルの壁に、大きな目を見開き、鋭い歯をむき出しにしたワニザメが描かれている。江戸時代の歌川国芳の浮世絵へのオマージュだ。

 「辛口な彼も、少しは認めてくれますかね」と、作者で壁絵アーティストのバキバキさん(46)は言う。「彼」とは、芸術家の故・岡本太郎氏だ。

 大阪府吹田市生まれのバキバキさんにとって、万博記念公園の「太陽の塔」は身近だった。画家になり、作品を通じて社会に問題提起をした岡本氏への尊敬の念が強まった。代表作も淀川沿いのアパートの外壁にチームで岡本氏の顔を描いた「岡本太郎」だ。

 ただ、「岡本ならこうする」との発想を持ち続けるうち、「芸術家としての自分のメッセージがなくなってしまう」とも感じたという。

 岡本氏と同じ「万博での仕事」が巡ってきた今回、「脱・岡本」を意識して思索を巡らせた。

 本格的な活用が進まず「負の遺産」とも言われてきた人工島の夢洲を「先人たちの夢や希望を、次の世代に受け継いでいく場所に」との構想を練り、描いたのが西ゲート脇の作品だ。

 日本の漫画やアニメの源流と位置づけられることもある浮世絵を下敷きに、現代の漫画のタッチを加え、伝統が今につながっていることを伝える。

 描き上げた今、「少し違った世界が見える気がする」と言う。作品名は「希望の系譜」。自らのメッセージをつないだ。

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 世界中の人々が集まり、連日多彩なイベントが開かれる大阪・関西万博。会場の夢洲(ゆめしま)で取材に駆け回る記者たちが、日々のできごとや感じた悲喜こもごもを伝えます。

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