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稽古場で「コップニ」を演じるきむきがんさん=2025年8月28日、滋賀県近江八幡市、中野晃撮影
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 戦後80年の夏、日韓を拠点にする2人の演劇人が、共同で劇づくりに挑んだ。一人芝居を続ける在日朝鮮人3世のきむきがんさん(51)と、韓国・釜山の劇団の演出家金善寛(キムソングァン)さん(57)。戦時中に植民地朝鮮から日本に連行され、戦後も日本の片隅で素朴に生きた在日1世を作品で描き、その人間としての生き様に共感してもらえればと2人は願う。

 きむさんは、戦前から朝鮮半島出身者が集まる大阪の猪飼野(いかいの)で生まれ育った。祖父母の故郷である韓国の済州島(チェジュド)は石が多い地だ。それにちなんで名付けた劇団「石(トル)」で二十余年、在日の生き様や被差別部落について、一人芝居で演じてきた。人権や歴史問題を題材にすると差別や被害を強く告発する内容を関係者に求められることもあったが、それでは幅広い層の観客に劇に込めた思いが伝わらないと感じた。

 観客が自分事として共感できる、素朴な日常の描写を通して「どんなに厳しい状況でもユーモアと活力にあふれ、力強く生きる人々の姿を見せて、観客の心を温かくしたい」と日本各地で演じてきた。

 韓国でも公演を続ける中、釜…

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