乗員乗客520人が犠牲となった日本航空(JAL)ジャンボ機墜落事故からまもなく40年となるのを前に、遺族会事務局長の美谷島邦子さん(78)が23日、JALの本社(東京都品川区)で社員ら1130人に空の安全への思いを語った。
JALは2005年から毎年、社員向けに「安全講話」題した講演会を開き、23日は鳥取三津子社長ら幹部も出席し、同社やグループ企業の社員がリモートでも視聴した。
1985年8月、日航ジャンボ機が群馬県の御巣鷹の尾根に墜落。美谷島さんは、1人で搭乗した次男の健さん(当時9)を亡くし、遺族らでつくる「8・12連絡会」の事務局長を長年務めている。
講演で美谷島さんは、健さんと空港で別れる最後の様子や事故後の活動に触れ、「安全は過去の事故の被害者や家族の思いの積み重ねの上に成り立っている。事故にあった人たちの声を生かすことが大事」と訴えた。
事故時に入社していた社員は、今春時点で現役社員で全社員の0.1%、再雇用を含めても3.6%に減り、教訓を伝えることが課題となっている。美谷島さんは、どんなときでも安全運航を第一にしてほしいという思いも込め、「『臆病者』と言われる勇気をもって、空の安全を一緒に作っていきましょう」と社員らに呼びかけた。
同社でパイロット訓練生の清水陽(みなみ)さん(25)は「事故が社会に与えた影響の大きさを改めて感じた。何かおかしいと思った時は、声を上げて立ち止まれるようにしたい」と話した。