来日2年目。アフリカから来た17歳は、この日が実戦デビューだった。
先発マウンドには、日本に帰ってきたばかりの元メジャーリーガーがいた。
いきなり打球が飛んできた
2015年6月、高知市営球場。野球独立リーグ「高知ファイティングドッグス」(高知FD)の練習試合に、約3千人の観客が詰めかけた。
相手の先頭打者の打球が、三塁を守る自分の横へ。グラブに収めたが、一塁への送球がそれてしまう。いきなり出塁を許してしまった。
初回を終え、しょんぼりとベンチに戻ると、笑顔で声をかけられた。
「緊張しているのは分かっているけど、落ち着いてプレーすれば大丈夫だよ」
藤川球児さん(45)だった。
プロ野球・阪神タイガースで一時代を築いたクローザー。大リーグにも渡った。故郷を拠点とする高知FDで日本球界に復帰後、この日が初登板だった。
「スーパースターが励ましてくれるなんて」。うれしくなって、緊張が和らいだ。
サンフォ・ラシィナ選手(27)。アフリカ西部のブルキナファソで、国際協力機構(JICA)の支援を受けて野球を始めた。
13年に15歳で来日した。高知FDの入団テストは不合格だったが、練習生としてチームに加わった。
別れの言葉 転機になった
「藤川さんの存在感はすごかった」と振り返る。
キャッチボールなど基本の練…