「こんなに熱心にドラマを見るのは初めて。朝、起きるのが楽しみで」。9月末に完結する、NHKの連続テレビ小説「虎に翼」。日本初の女性弁護士のひとりで、裁判官としても活躍した三淵嘉子さんをモデルにした猪爪寅子の人生を描きます。元官僚で、最高裁判事もつとめた櫻井龍子さん(77)は「寅子ちゃんに感情移入できる、まさにそこに日本の問題がある」と言います。話を聞きました。
櫻井龍子さん
さくらい・りゅうこ 1947年福岡県生まれ。70年に旧労働省に入省し、育児休業法などを手がけた。九州大法学部客員教授などを経て、2008年9月、歴代3人目の女性の最高裁判事に。17年1月退官。現在、一般財団法人日本カメラ財団理事長。
――4年制大学へ進学する女性がまだ少なかった時代、櫻井さんは九州大法学部を卒業し、1970年に旧労働省に入ります。「虎に翼」で描かれたような、女性ゆえの「壁」を感じたことはありましたか。
ありがたいことに、厳しい「壁」にぶつかったことは少なかったですね。小学校教員だった父は、「女性だから」と大学進学を閉ざすこともありませんでした。
でも、寅子ちゃんがぶつかったような「壁」や「天井」が全くなかったわけではありません。放映当初は、私がかつて味わった思いがテレビの中で再現されていることも多く、毎日涙を流していました。
「壁」のようなものに初めて会ったのは、大学3年生の時でしょうか。卒業後を考えた時、女性には多くの道がないと知りました。司法試験か公務員試験か、の2択でしたね。
大学の学生課に、求人は山ほど来ているんです。でも言われました。「全部男性用です。女性求人はありません」って。
つてをたどって民間企業の情報を集めもしました。ある銀行は、女性は短大卒の採用で「4、5年経ったらやめてください」という方針でした。そんな馬鹿な。一蹴しました。
でもね、そういう時代だったんです。85年以前、日本はまだ「戦前」でしたから。
――戦前、ですか。
戦前です。講演会でよく言うんです。「1985年までは戦前です」って。
1947年に日本国憲法が施…