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日本土地家屋調査士会連合会の岡田潤一郎会長=2025年2月12日、東京都千代田区、山田史比古撮影

 2024年4月に不動産相続時の登記の申請が義務化されました。以降、全国に約1万5千人いる土地家屋調査士に依頼が増えているといいます。しかし、登記の専門家というと司法書士を思い浮かべる人が多く、失礼ながら土地家屋調査士のイメージは乏しいのではないでしょうか。どんな場合に依頼することになるのか。愛媛県で業務を行っている土地家屋調査士で、日本土地家屋調査士会連合会の会長をつとめる岡田潤一郎さんに聞きました。

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 ――相続登記の依頼先は、司法書士か、あるいは弁護士を思い浮かべる人もいるかもしれません。土地家屋調査士に相談、依頼する必要があるケースとは。

 私たちがかかわるのは、不動産の表示に関する登記です。

 不動産の登記には、表示に関する登記と権利に関する登記が存在します。相続登記そのものは、誰が相続するのか、所有権という権利に関する部分です。でもその前段で、対象となる不動産の正確な所在や面積、建物であれば構造や種類など、物理的な状況を明確にする必要があります。それが表示に関する登記です。それを、みなさんに代わって申請させていただくのが土地家屋調査士となります。

 ――相続登記の義務化以降、具体的にはどのような相談が増えていますか。

 たとえば、「相続登記が義務になったと聞いたけれど、うちの実家は登記してないんです。どうなりますか」という例ですね。不動産は本来、表示に関する登記で物理的状況を明らかにしたうえで、権利の登記につなげていく。でも、俗に未登記建物といいますが、未登記の状態では権利をつけられませんから、相続登記もできません。まずは表示の登記をする必要があります。

 ――本来、建物には表示の登記をする義務があるはずですね。

 そうです。表示に関する登記の一部には、1960年に制度が誕生して以来、ずっと義務規定が存在しています。義務を怠った場合、10万円以下の過料も規定されています。

 ――科されたことがないと聞きますが。

 確かに過料が科された事例は…

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