裁判の後、報道陣の取材に答える元ジャニーズJr.の田中純弥さん(中央)と、田中さんと同時期に旧ジャニーズ事務所に所属していたという元Jr.の大堀治樹さん(右)と野中和久さん=2025年2月17日午前10時30分、東京都千代田区、島崎周撮影

 旧ジャニーズ事務所(SMILE―UP.(スマイルアップ))創業者、故ジャニー喜多川氏の性加害問題をめぐり、同社が元ジャニーズJr.で被害を訴えている田中純弥さん(43)に対し、損害賠償債務について起こした訴訟の第1回口頭弁論が17日、東京地裁であった。同社は、同社が設けた被害者救済委員会が提示する補償額を超えての債務は存在しないことの確認を求めているが、田中さんは争う姿勢を示した。

 田中さんは、同社や関係者らを相手取り、米ネバダ州で被害を受けたとして、同州の裁判所に賠償を求めて昨年12月に提訴。その直後に今回の訴訟が起こされたという。

 田中さんは意見陳述で、14歳のころから喜多川氏から繰り返し性被害を受けてきたとし、ラスベガスのほか、ロサンゼルスやグアム、ハワイでも被害に遭ったと話した。

Jr.時代の写真を示し「どんな気持ちかわかりますか」

 補償については、「被害者の存在に目をつぶり、子どもたちが被害を訴えられない状況を作り出してきたスマイル社が事実上、被害者救済委員会という枠組みによる解決を強制している」と主張し、「被害を受けたネバダ州においてこそ、公正な裁判を受けることができる」と訴えた。

 また、事務所にいたころの自身の写真を示し、「このときは笑っているけれど、大人たちに守ってもらえず、親にも言えなかった。さらに加害者から訴えられたら、どんな気持ちになるかわかりますか」と声を震わせて話した。

 この日は、田中さんと同時期に旧ジャニーズ事務所に所属していた、元ジャニーズJr.の大堀治樹さん(41)や野中和久さん(43)らが傍聴した。

元Jr.の大堀さんと野中さん「仲間として声あげたかった」

 報道陣の取材に、大堀さんは「被害者側が訴えられているという状況に驚いている。加害者側の救済の枠組みを押しつけられていると感じている被害者がいるのであれば、しっかり向き合ってほしい。田中さんが『うそ』『金目当て』といった誹謗(ひぼう)中傷を受けているのも見ていて心が痛い」。野中さんは「加害者側が被害者を訴えるのはおかしい。仲間として声を上げたかった」と話した。

 スマイル社は取材に対し、「被害者救済委員会の判断に従って補償を進める立場にある。被害者の間の公平を図る観点からも、スマイル社の一存で補償金額を増減することはできず、裁判所の判断にゆだねるほかない」と説明。米国訴訟については「従前日本に住んでいる人から日本企業に対する補償請求であるため、米国の裁判所には管轄は認められない。日本の裁判所での解決が適切と考えている」とした。

 補償をめぐってはスマイル社が、田中さんを含め、性被害を訴える当事者4人に対して、損害賠償債務が存在しないことの確認などを求める訴訟を、東京地裁に起こしている。

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