現場へ! 社会を変えるお金の流れ(1)
黒豆、栗の甘露煮、ハム、酢豚……。一見普通の中華風おせちだが、動物性の素材はゼロ。卵や乳製品もとらない完全菜食主義のビーガンも食べられる。「ブイクック」が運営するビーガン専門ネットスーパーの商品だ。クリスマスケーキやお菓子もある。4月には東京・渋谷でビーガン用のすし店も始めた。
ブイクックは、「ヴィーガン生活を支える」を掲げるスタートアップ。環境負荷や動物倫理を理由にビーガンを始める人は世界中で増えているが、日本では実践しにくい。最高経営責任者(CEO)の工藤柊(25)は、高校3年生の時にビーガンになった。大学では学校にかけあい、学食にビーガンメニューを実現させたが、「日本ではビーガンでも安心して食べられる店が少ない。ひいては人間関係にも支障が出てしまう」。そこで2020年に起業した。
同社に出資するのが、京都に拠点を置くベンチャーキャピタル(VC)「taliki」。同社は社会課題を解決する社会的起業に特化して投資する。
talikiを創業したのは中村多伽(29)。京都大学の学生だった14年、カンボジアに小学校を建てるプロジェクトに参加。地域住民に感謝されたが、「全国に小学校は作れないし、構造的な問題は解決できない。自分がプレーヤーでいる限界を感じた」。
ならば、社会課題を解決するプレーヤーを増やそう。そうすれば社会は変わるはず、とtalikiを起業。社名は「他力本願」からとった。3カ月の社会起業家育成プログラムを実施、参加者はこれまでに300人以上だ。
VCに乗り出したのは「知識やノウハウ、ネットワークを提供すればするほど『お金さえあればできるのに』と思うことが増えてきて。金融機関につなげても、必ずしもお金を出してもらえるわけではない。自分たちで投資判断をして出資したい」からだ。
「本当に当事者が救われるか」
20年に第1号ファンド、今…