世界自然遺産「やんばる」の森が広がる沖縄本島北部にも、沖縄戦の痕跡が残る。
人口27人の国頭村謝敷集落。フクギに囲まれた路地の向こうに、青い海が見える。民家のコンクリート塀にある長さ15センチほどのくぼみは、機銃掃射の跡という。村史によると、沖縄戦で集落は全戸全焼した。
2022年、仲本いつ美さん(38)はここを拠点に、戸建ての宿泊施設「南溟森室(なんめいしんしつ)」を始めた。今は、若い社員たちと4軒の宿を営む。
「光を観(み)る、と書いて観光。小さな集落と暮らす人に光をあて、受け継がれた暮らしの場所を次の世代につなぐのが目標です」
アメリカの外交官「祖父は沖縄戦を」
昨年、米国大使館から突然届いた一通のメールが、平和への思いを強くするきっかけとなった。
米国務省による若手実務者向けの研修プログラムに、宿泊客が推薦してくれていた。選考を通過し、今年3月に渡米。地方観光をテーマに3週間、各地で意見交換や視察をした。最も印象的だったのが、首都ワシントンの外交官との対話。県民の4人に1人が亡くなった沖縄戦が話題になった。
仲本さんの祖父は戦前、生きて帰ったら結婚すると祖母に言い残し、情報通信兵として村から中国大陸へ出征した。「生きて帰ってくれたから、父がいて、私がいる。沖縄で生きる希望を失わず、命をつないでくれた祖父母への感謝を話しました」
外交官の一人は、祖父が沖縄戦を経験。祖父の助言で平和のため、外交官を志したと明かした。「心を通わせ、異文化を受け入れることが、平和につながると感じた。観光を通じ、そうした経験を届けたい。観光は平和産業なんです」
リゾートの先の沖縄、求める人の琴線に
もともと、地元から離れるつ…