証言台に立つ内田梨瑚被告=絵・清水環

 北海道旭川市の神居古潭で昨年4月、女子高校生(当時17)がつり橋から落ちて溺死(できし)した事件で、殺人罪などに問われている当時19歳の女(20)に対する裁判員裁判の第3回公判が3日、旭川地裁(小笠原義泰裁判長)で開かれた。共犯とされる内田梨瑚被告(22)=殺人罪などで起訴=と、監禁に関与した少年(17)=監禁の非行内容で少年院送致=の証人尋問があった。

 内田被告は白いマスクを着け、黒い薄手のタートルセーター姿で証言台に立った。裁判長に宣誓を求められると、「同じ内容の裁判を控えているので、ここでは話したくありません」と拒否し、退廷した。

 検察側は内田被告の供述調書を読み上げた。調書によると、高校生は橋のロープと骨組みにつかまって自力で橋に戻ってきたという。内田被告が「自殺するなら私がいなくなったあとでやって」と言い、帰る気になったときのために高校生のスマホと現金4千円を橋の上に置いた。

 女と走って駐車場の車に戻る坂道にさしかかったとき、「キャー」という悲鳴と川に落ちる音を聞き、「自殺したと思った」と供述。旭川に戻る車の中で、これまでのスマホでのやりとりをすべて削除するよう女に命じたという。

 少年への尋問は別室とつなぎ、法廷には音声だけが流れた。検察側の質問に対し、少年は内田被告とビデオ通話した時の様子を証言した。

 先に帰宅した少年は、午前3時35分ごろ、自宅から内田被告のスマホに電話したという。すぐにビデオ通話に切り替わり、女が高校生に馬乗りになり、顔を殴ったり、首を絞めたりしているのが見えた。

 次に画面に目をやると、橋の通路の上でも暴行は続き、ぐったりしている高校生に対し、内田被告が「こいつ死んだふりしている」といっていた。いったん画面を伏せたが、「落ちろ」「死ねや」と騒がしくなり、再び画面を見ると、高校生は川に背を向け欄干に座り、「写真をばらまいてすみません」などと何度も謝っていた。

 この後、周囲の明かりが消えて画面が暗くなったが、通話は継続。怒鳴り声はやみ、内田被告の「早く行こう」と女を促す声と足音だけが聞こえた。川に落ちる音は聞いておらず、高校生を置いて家に帰るのかと思ったという。

 内田被告は少年に「あとで高校生の親が来るから」といい、証拠隠滅のために関係する通話などの履歴削除と、警察に聞かれても黙秘することを指示したという。

 自身の逮捕後に、少年は高校生が亡くなったことをニュースで知り、「内田被告に殺されたと思った」と話した。女に聞いたときは「生きている」「川には落ちていない」と言っていたという。

 少年は最後に高校生を救える場面は何度かあったともいい、「本当に申し訳ない」と遺族や関係者に謝罪した。

 4日は女の証人尋問がある。

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