戦火や災厄で途切れてしまった家族や地域の記憶、そして歴史を、アートで編み直すことはできないか……。そんな問いに、今も戦火のやまない中東出身のアーティストが向き合い続けている。
レバノン出身で、今は故国とパリとを行き来しながら活動するジョアナ・ハジトゥーマさんと、カリル・ジョレイジュさん。2人で一緒に現代アートや映像作品を作り続けて、もう30年以上になる。
ともに1969年、ベイルート生まれ。それぞれのルーツは、ギリシャ、シリア、パレスチナと多様だ。異なる民族や宗教を受け入れ、交じり合ってきた歩みから「モザイク国家」と呼ばれるレバノン。その歴史は、2人にとって自分たちの家族の歩みそのものだ。
その故国で70年代に起きた内戦が、表現の道へと導いた。「誰がいつ、どのように戦闘を起こしたのか。勝者は誰かも分からない。『語る』ことの難しい暴力を表象する不可能に、挑もうと思いました」と、カリルさん。
2016年に発表した映画「…