京都で培われた「いけず文化」をお土産にしたステッカーがひそかに人気になっているなど、なぜ今、「いけず」が新鮮にうつるのか。昨年、「エレガントな毒の吐き方 脳科学と京都人に学ぶ『言いにくいことを賢く伝える』技術」(日経BP)を出版した脳科学者の中野信子さんに聞きました。
脳は本来「論破したい」もの
本来、残念ながら脳は他人を「打ち負かしたい」「論破したい」ものです。現代のインターネット社会でも「本音が正義」という実はあまり根拠のない、相手を打ち負かす快感を自制することなく、「論破」するのが最上といった雰囲気が形成されてきました。けれども、論破してしまったら、その人との関係はそこで終わりになるかもしれません。
- はんなりと笑う女将をデザインしたステッカー、裏返すと激しい怒りの表情 京都の「いけず文化」をお土産に
一方、職場やご近所づきあいでは、あれこれ考えすぎて「論破」どころか、自分の気持ちを抑え込み気持ちの中によどんでいく恨みつらみを抱えて過ごす方もいらっしゃると思います。これも自分自身にとって健康とは言えません。
自分の心に無理をさせず、相手からのリベンジを誘わない。そんなコミュニケーション術が京都人の「いけず」なのではないかと思っています。
直接言ったら人間関係にヒビ 京都人の技は
例えば、京都の人がよく使う技に「褒めている」ように見せかける、というのがあります。代表的なのが、今や有名になった「お嬢さん、ピアノが上手どすなあ」。もちろん、時と場合によっては、それが本音の時もあるでしょう。
でも、京都的「いけず」の文…