甕棺の上に振りまかれた黒土は葬送儀礼のサインか=福岡県春日市の須玖岡本遺跡

 赤と黒――。弥生人はこの2色の組み合わせに、魔術的な意味を読み取っていたのだろうか。そう思わずにはいられない調査成果が、九州特有の墓制である甕棺(かめかん)墓の発掘で浮かびあがっている。

 中国・後漢王朝から金印を贈られ、「魏志倭人伝」にも記録された弥生時代のクニ、奴国。いまの福岡平野一帯にあったとされる。その王墓として名高い須玖岡本遺跡(福岡県春日市)の一角で、地元の市文化財課が昨秋から弥生時代中期中ごろ(紀元前2世紀)の甕棺墓を発掘してきた。

 甕棺墓とは大きな甕に死者を入れて埋葬する北部九州独特の墓制。今回は二つの甕を組み合わせてお棺にしており、甕を埋める穴が縦4メートル弱、幅2メートル余りと大きいため有力者の墓とみられる。興味深いのはそこから、これまでよくわからなかった葬送儀礼のプロセスがたどれそうなことだ。

 人骨や副葬品はなかったもの…

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