声を張り上げる青森明の星の小鷹悠真選手(中央)=2025年7月14日午後1時24分、県営、小田邦彦撮影

 (14日、第107回全国高校野球選手権青森大会 青森北2―0青森明の星)

 青森明の星の背番号13、小鷹悠真選手(3年)はベンチから身を乗り出していた。「心の支え」だったという高校野球をともに戦う仲間のため、声を上げ続けた。

 小鷹選手にとっての高校野球は、練習に行くことが最初のハードルだった。中3の時に、握力が弱まり始めた。因果関係は分からなかったが、ちょうど新型コロナワクチンを接種した時期だった。

 高1の時には下半身の力が弱まり、起きられない日々が続いた。病院で「ワクチン接種後症候群」と診断されたという。記憶障害も出て、友達の名前を思い出せないこともあった。野球どころか、「学校も辞めようかと思いました」と述懐する。

 鼻やのどの奥の炎症部分を削って薬を塗布する治療を始め、徐々に回復した。杖をつきながら、部活に顔を出せるようになった。野球部の仲間や樋口敦監督が励ましてくれた。「その気持ちに、寝たきりじゃなく、何かの形にして応えたかった。だから野球を辞めなかった」

 高3の5月ぐらいから、練習ができるようになった。とはいえ、握力は20キロ程度。歩いたり、走ったりするのもしんどい。でも、樋口監督はその努力を認め、最後の夏に背番号を与えた。

 青森北との対戦では出番がなかったが、12日の1回戦は途中出場し、3打数3安打。これが、3年間の公式戦の全成績でもあった。

 「悔いはない。もうすがすがしい気持ち」。自らの高校野球をやり遂げた小鷹選手の顔は満面の笑みだった。

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